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第4話 痴漢男に鉄槌を

ผู้เขียน: 和成ソウイチ
last update วันที่เผยแพร่: 2026-04-28 06:05:50

 ――春。

 私は26歳になっていた。

『こより先輩、おはようございます。いよいよ今日からですね』

「ええ。ありがとう、朝菜。いろいろ協力してもらって。おかげで無事に入学できたわ」

『いえ。私もすごく刺激をもらって、ペンが止まりません』

 スマホのスピーカーから、興奮した様子の朝菜の声が聞こえてくる。

『まさか、本当に26歳JKが爆誕するなんて! あとで写真ください、先輩!』

「もう、朝菜ったら」

 私はくすりと笑う。

 1LDKのアパートで、私は身支度を整えていた。

 姿見の前には、私立黎明館学園の制服をまとった私が立っている。中等部廃止によって制服もリニューアルしたのか、昔と違って可愛らしいデザインだ。リボンタイがアクセントになっていた。

 ――私は今日、二度目の高校入学を果たす。

 目的のひとつは、怜央の野望を内側から暴き、彼に復讐すること。

 朝菜とともに情報を集めた結果、怜央は黎明館学園を、自らの出世のために暗躍する場としているらしいことがわかった。

 高校には様々な生徒が集まる。当然、その保護者たちともコネクションが生まれる。

 学校内部のことは外から見えづらい。聖域と化した学内で、怜央は生徒や保護者に対して影響力を確保し、利用しようとしている。

 私は、生徒の立場で内側から暴く。

 怜央に使い捨てにされた私みたいな子は、もう出したくない。

『でも、本当に大丈夫ですか? その……周りが一回りも若い子ばかりだと、先輩のメンタル的にきついんじゃないかと』

「仕方ないわよ。いい歳したおばさんなのは自覚あるし」

『そんなことないです! こより先輩は、今でもJKで通用しますよ! 年齢さえ黙っていれば』

「……また子どもっぽいって言いたいのね」

 ため息をつきながら姿見を見る。

 まあ確かに、10年前の自分とどこが変わったのかと言われたら、返答に困る。愛用の眼鏡をかければ、生徒会副会長だったあの頃のままだ。

 唯一異なると言えば、左足の怪我だろうか。

 膝の手術跡を隠すため、黒タイツをはいている。

 見た目が若いと言われて悪い気はしないが、さすがに未成年の高校生に見られるのはどうかと思う。

 まあ、この外見のおかげで違和感なく高校に溶け込めそうだけれど。

『黎明館には私の弟も通ってるので、どんどんこき使ってやってください!』

龍慈りゅうじ君ね。頼りにしてるわ」

 朝菜の弟、久我龍慈君は、現在黎明館学園の3年生で18歳。朝菜と出会ったころからの付き合いなので、私にとっては年の離れた弟のような存在だ。

 私の正体を知る身内が学内にいるのは、とても心強い。

「そろそろ出かける。また何かあったら連絡するわね。お仕事、頑張って。朝菜」

『はい! こより先輩もお気を付けて!』

 スマホをしまい、通学鞄を手にする。

 エージェント時代の習慣で、超小型カメラや録音マイクといった、探偵さながらの機器もポケットにしのばせた。

 まさかこんな形で「もう一度高校に通う」という夢が叶うとは思わなかった。

 今度こそ卒業しよう。

 そして楓先生に、笑顔で送ってもらうのだ。

 ――アパートを出て、最寄り駅へ。

 私はすでに車を所有している――運転できなければ仕事にならなかったから――が、通学は敢えて電車を使うことにした。他の生徒たちに合わせるためだ。

 第一、生徒が自家用車で通学なんて校則違反もいいところだろう。入学初日から謹慎を食らうわけにはいかない。

 最寄り駅に到着し、事前に調べておいた電車に乗る。今日は念のため、1本早い便を選んでいた。

(それでも、だいぶ込んでるなあ)

 座席はすべて埋まり、吊り輪に掴まっている人も多い。私と同じ黎明館学園の制服を着ている生徒も数人いた。

 私は左膝をさすった。これから黎明館高校に乗り込む。楓先生や怜央と、また顔を合わせる。その緊張のせいか、膝の傷が少し痛んだ。

 この痛みを忘れないようにしよう。

(ん……?)

 ふと、出入り口付近に立っていた女子生徒が目に付いた。

 他の生徒がスマホを操作している中、その女子生徒だけがスマホを持った手をだらりと下げたまま俯いている。

 彼女の後ろには、スーツ姿の男性。

 男性の手が女子生徒のスカートに伸びていることを確認した瞬間、私は動いた。

 男性の手首を掴んで、ひねり上げる。

「い!? 痛たたたっ!? な、何だね君は!?」

「次の駅で降りましょうか。痴漢は卑劣な犯罪ですので」

「わ、わたしは、ち、痴漢なんて」

「証拠映像ならあるけど?」

 ポケットから小型カメラを覗かせ、下から突き上げるように睨むと、男性は脂汗を流して黙った。

 エージェント時代、こういう勘違い男は何人も相手にしてきた。プロの格闘家や喧嘩屋なら分が悪いが、ただの小太りなおじさんを制圧するくらいなら十分すぎるほどの経験と鍛錬を積んできている。

「む、無実だ。わたしにこんなことして、騒ぎになったら――」

「この人痴漢です。取り押さえにご協力を」

 そう助けを求めると、周囲にいた別の男性らが痴漢男を取り囲んだ。

 私は痴漢男に、無慈悲に告げた。

「刑法第176条の不同意わいせつは、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。騒ぎ? 上等。あなたみたいな痴漢男を放っておくくらいなら、いくらでも見世物になってあげる。善良な市民を舐めないで欲しいわね」

「う……」

 顔面蒼白になって項垂れる痴漢男。

 私はもう10年前の私とは違う。理不尽にただ屈するような、か弱い女の子じゃない。

 取り押さえに協力してくれた男性が、顔を引き攣らせながらぼそりとつぶやく。

「あの子、怒るとめちゃくちゃ怖いな。学生とは思えないぞ」

(まあ、それなりに地獄を歩いてきたからね)

 私は眼鏡を外し、助けてくれた男性たちに微笑みかけた。少しだけ猫を被る。

「助けていただいて、ありがとうございます。皆さんがいてくださって、とても心強かったです」

「お、おお」

「これくらい当然だよ」

 それだけで、男性たちから動揺が取れる。

 自然と周囲から拍手が上がった。

 

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